リレーコラム2023

富士山  司法書士 桝田美佳子
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします

 さて、新年の楽しみと言えば、おせち料理、初詣、お年玉といろいろとありますが、年賀状もその一つです。最近では年賀状離れが進んでいて、同世代でも「今年限りで..」と年賀状じまいをされる方もおられますが、私は家族写真だったり近況報告だったりの年に1度の交流を大事にしたいと思っています。

 年賀状のイラスト集を見ると、干支や七福神などとともに必ずあるのが「富士山」です。夢にみると縁起がいいものとして「一富士二鷹三茄子」は有名ですし、日本のお札にも描かれています。日本人にとって富士山は特別な山なのでしょう。

 そんな富士山に昨年9月に登ってきました。
 登山が趣味と言うほどいろんな山を登っているわけではないのですが、信州の山に登ると山頂から富士山が見えることがあります。山頂から見える富士山は本当に格別で、遠く雲の上にあの特徴的な富士山のてっぺんが見えると、「あ~、本当に富士山は美しい山だな」と感動ひとしおです。
 「富士山は見て美しい山で登るつもりはない」と思っていたのですが、年々体力も筋力も衰えてきたことを感じ、「登らない(←自分の意思)じゃなくて、登れなくなる(←体力の限界)」と思ったら「もう今しかない!」と思い立ち、某アウトドアブランドの富士山登頂ツアーに申し込みました。登山当日は天気に恵まれ、駿河湾の景色や雲海を眺めながら登り、無事に日本最高峰剣が峰(3776m)に立つことが出来ました。

 登頂当日に着ていたのは「中村利雄法律事務所オリジナルTシャツ(TEAM TOSHIO)」(←非売品です!)、「事務所を代表して日本のてっぺんに立ったぞ~」と思っていたら、当事務所では2番のりでした。なんと平尾弁護士が高校生の時に登頂したそうです。
 私が富士山に登った途端、事務所メンバーが「実は私もいつか富士山に登りたいんです」とカミングアウトし始めました。当事務所の3番手は誰になるのか!?その時はまたこのコラムでご紹介できることと思います。

【2023年1月記】
長い挨拶  弁護士 吉田誠司
 式典や会合での長い挨拶やスピーチ、あれはよくないですよね。私は今年4月から1年間、京都弁護士会の会長を務めることになり、いろいろとその機会が多くなっているのですが、「長い挨拶・スピーチはやめよう」と心がけています。ただ、長くてよいのが一つあるのではないかと思います。それは告別式での弔辞です。弔辞は、結婚式など慶事のときよりずっと形式的になりがちで、そもそも長くはなりくいのですが、私が経験したそれは、優に10分以上をかけたものでした。

 故人は、私が弁護士になる前の司法修習生という身分のときに指導をして頂いたM先生という方でした。弔辞を読まれたのはM先生の後輩であり長く一緒に仕事を共にされてきたA先生という方です。A先生は、M先生が弁護士になってから、いつどのような仕事をし、どのような事件を解決し、誰を救ってきたのか、時系列で事細かに解説されました。弁護士経験40年のM先生でしたから、その歩かれた道は長く険しく、しかし豊かで、弔辞の時間は長くとも全く飽きることはなく、本当に聞き応えのあるものでした。故人が、どんなに社会に役に立ってきたか、この世でどれだけ頑張ってきたかがよくよく分かり、参列者一同が故人に心から感謝しつつ見送れる、感動的な弔辞でした。

 仏教式の葬儀に参列すると僧侶によって長いお経が読まれますが、ほとんどの人には分かりません。キリスト教式の葬儀に出ると、牧師さん(神父さん)が故人のエピソードを語ってくれることがあります。宗教上のことを置いて参列者の立場だけで言うならば、私は、後者の形式の方がよいなと思います。
 漫画家の赤塚不二夫さんの葬儀のときは、タモリさんが弔辞を読まれました。無名だったタモリさんを見いだして世に出したのが赤塚不二夫さんです。伝説的となった約8分にわたる長い弔辞は、赤塚不二夫さんの人柄や偉大さが存分に伝わるものでした。タモリさんは手元では用意した式辞を読んでいるようですが、実はめくられません。カメラが捉えていますがどうも白紙のよう。タモリさんは弁慶の勧進帳のように、アドリブか、あるいは全てを頭に入れて臨んだのです。芸をもって師匠を見送った秀逸なスピーチでした。なかでも最後の一言が感動的でした。

 「赤塚先生 本当にお世話になりました。ありがとうございました。・・・私も、あなたの数多くの作品の一つです」

 短くても、長くても、しっかり準備をして、心に残るスピーチがしたいですね。

【2023年4月記】
6月1日から消費者契約法が変わります  弁護士 平尾嘉晃
 令和5年6月1日から消費者契約法が変わります。

 令和5年6月1日から施行される改正消費者契約法では、高齢者の保護、成年年齢引下げによる若年成人の保護に資する取消権の類型が二つ追加されました。

 一つ目は、勧誘者が、勧誘することを告げすに退去困難な場所に同行して、その上で勧誘した場合、取消ができるようになりました
 例えば、高校時代の先輩から、ためになるセミナーがあると誘われ、多数の会員が集まるセミナー会場に連れていかれ、投資商材の契約や、マルチ商法の契約をしてしまったという場合、この規定で取消ができるようになりました。
 最近は、「物なしマルチ」といわれる、儲け話をネタに人を勧誘するマルチ商法が流行っているようです。セミナーなどの名目で会場に連れていかれて、断り切れずに契約をしてしまった時は、契約の取消しを検討してみましょう。損を取り返そうとして自分の友人を勧誘するといったことは決してしないでください。
 
 二つ目は、勧誘者が、契約勧誘の際に、威迫する言動を交え相談の連絡を妨害した場合、取消ができるようになりました
 例えば、一人暮らしの高齢者が、訪問販売で訪れた事業者から商品購入の勧誘を受け、東京にいる息子と相談したいと思い、電話をかけようとスマホを取り出したところ、そんな時間はないからすぐに決めてくださいといわれ契約をしてしまったという場合、この規定で取消ができるようになりました。
 また、若者の場合でも、例えば、起業のセミナーに参加し、スタートアップ講座などの契約の勧誘を受けたものの、両親に相談してから決めようと思いスマホを取り出したところ、君ももういい大人なんだから自分のことは自分で決めなさいと言われ、相談を断念したような場合が考えられます。
 ちなみに、威迫する言動とは、畏怖、恐怖心を生じさせる強迫(民法第96条第1項)とは異なり、不安や戸惑いを感じさせる言動で足りるとされています。不安やと戸惑いを感じさせる言動があったかどうかについては、裁判においては事実認定の問題となりますが、「最終的に、消費者に連絡を断念させる」言動が勧誘者にあれば、威迫する言動があったという事実認定になります。

【2023年6月記】
京都マラソン2023  弁護士 宮﨑純一
 2023年2月19日(日)、京都マラソン2023に参加した。
 これまで、京都マラソンには何度か応募してきたが、毎回抽選で落選していたので、今回も落選することを見込んで、いわばノリで、ポチッと応募した。ところが、コロナ禍でマラソン人気が一時的に低下しているという情報を知らなかったため、当選してしまった。そして、その後、何か月にも渡って後悔することになった。やはり、軽はずみなポチッとは大変危険である。

 しんどい練習期間は忘れて、マラソン当日がきた。マラソン当日は、なんと雨模様。参加するマラソンランナーに、きっと雨男か雨女等がいたに違いない。「雨なんだから・・・」と悪魔の囁き。雨は、棄権の立派な理由になるはず。悶々としながらも、重い足取りで、西京極球技場に電車で向かった。
 西京極駅を下車してから、改札を出るまでも長蛇の列、改札を出てから球技場に向かうまでも長蛇の列、球技場に着いたら人・人・人ばかり。雨を防げる場所も確保できず、トイレも長蛇の列。
球技場に着いてからも忙しい。スタート1時間前までおにぎりを複数食べてエネルギー補給、中村利雄法律事務所オリジナルTシャツのTEAM TOSHIOに着替えて、荷物をまとめて預けて、トイレに並んで。スタート時間の30分以上前から、整列をする。雨の中、百均の雨カッパを羽織ってスタートの号砲が鳴るのを30分以上じっと待つ。寒い。なぜ軽はずみにポチッとしてしまったんだろうと後悔。

 いよいよスタートカウントダウン。スタートの号砲が鳴る。号砲が鳴っても、全く進まない。号砲から約15分後、やっとスタートラインに到達。まだ早歩き程度のスピード。球技場を出て公道を走り出す。エイド毎に水分補給をしたり、エネルギー補給をしたり、サプリを飲んだり、結構忙しい。
 公道を走って驚いたのは、沿道の応援の多さ。コースの良さもあるだろうが、沿道の応援が最後まで途切れない。こんなに多くの沿道応援は、他のマラソンで見たことがない。応援があると元気が出るし、サボれない気持ちになる。マラソンを走っている最中は、頑張ろうという気持ちと、歩いてラクしたいという気持ちと、なぜ走っているんだろうという気持ち等が葛藤している。そんな心理状態の中で、沿道の応援は、勇気と力をくれる。その勇気と力が終盤に効いてくる。ありがたい。
 そのお陰で、何とか完走はできた。支えて下さった全ての方々に感謝である。しかし、目標としていたサブフォーは達成できなかった。悔しさと疲労が残った。

 夜は、お風呂に入った後、焼肉とビールに舌鼓。至福の時。充実感。疲れがとんでいく。この瞬間のためのマラソンか。それにしては準備期間が長くて辛すぎる。
 そして、疲労を忘れた学ばない人は、また次なるポチッとへ。なぜマラソンを走るのか。

【2023年8月記】