「使命」(ミッション)
 
  私が弁護士を目指した動機は2回訪れました。最初の動機は、テレビドラマ。1970年代、小学生の時にみた「事件狩り」という、石立鉄男さんが主役の弁護士ドラマです。石立さんはアフロヘアーの甲高い声で当時人気の俳優さんで、一般的には杉田かおる(当時は子役)さんと共演した「パパと呼ばないで」が有名かも知れません。とにかく毎回毎回えん罪の刑事事件で、法廷で真犯人をあぶり出し無実の人を救うという格好いいドラマでした。「こんな仕事があるのかあ。弁護士になるなら『法律』の勉強か・・、弁護士のことが書いてある法律は・・・えっと、これか、『弁護士法』?」と、私は家にあった六法全書を開いて弁護士法を筆写しはじめたのです。読めない漢字にルビを振ってノートに書き写すだけ。写経のようなものです。変な子どもだったと思います。何条まで写したか覚えていませんが、第1条だけはそれ以来ずっと空で言えるほど記憶に残りました。

弁護士法第1条「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」

 小学生の私には難しい呪文を覚えたのと同じ満足感が得られただけで、たぶん数ヶ月で、この「趣味」も飽きました。
 2回目は、大学生の時です。その頃京都地裁で審理されていた水俣病京都訴訟の傍聴や被害者支援のお手伝いをすることがあり、そこで本物の弁護士たちが、法廷の中でも外でも、被害者のために力を尽くして闘う姿を見ました。そしてもう一度おもいだしました。

「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」

 大学生になっていた私はその意味を、ドラマでも六法全書でもなく、目の前の現実と付き合わせてはっきりと理解することが出来ました。一つの職業を規律する法律の冒頭に、このような崇高な理念を述べた仕事は他にないのではないか。弁護士になりたい。今度は単なる憧れではなく、本気で自分の仕事にしたいと思い定めました。
これが、私が弁護士を目指したきっかけです。もちろん実際に弁護士になってみると、人権や社会正義にかかわる事件ばかりではなく、身近な、いろいろな紛争を解きほぐし、解決していくことになりましたが、いつも初心を忘れずにいたいと思っています。弁護士法1条が、弁護士に託した「使命」(ミッション)を忘れないこと。これが私の常なる目標です。