「被害者救済」
 
  私は高校生のとき、弁護士という職業の具体的活動内容を知らなかったが、ドラマ等の法廷シーンを見て、「かっこいいなあ。弁護士になれたらいいなあ。」と漠然と弁護士に憧れ、大学の法学部に進学することにした。

  しかし、大学の法学部に進学すると、キャンパスライフを謳歌してしまい司法試験の受験勉強をほとんどしていなかった。ただ、大学3回生の冬になると、周りの友人等が就職活動を開始したため、私も企業に就職するのか司法試験の受験勉強に専念するのか選択をしなければならなくなった。そこで、私は悩んだ末、司法試験の受験勉強に専念することに決めた。その理由は、弁護士という仕事は、人の人生を救うこともでき、しかも、その依頼者に直接接することができ、感謝もしてもらえるというとてもやり甲斐がある仕事であり、自分の実力次第で、直接人の役に立てると思ったからだ。

  そんな理由で受験勉強を開始していたある日、衝撃的な出来事が起こった。高校及び大学の同級生である友人が、バイクで走行中、飲酒運転の車に弾かれて亡くなった。友人及びその遺族は、突如として、飲酒運転による業務上過失致死罪(当時はまだ危険運転致死傷罪は創設されていなかった。)の被害者となってしまったのである。その業務上過失致死罪の刑事裁判を毎回傍聴していた私は、「息子が帰ってくるのなら、私が被告人に代わって一生でも刑務所に入ります。でも、もう息子は帰ってこないんです。」という友人のお父さんの言葉が今でも忘れられない。

  加害者の行動によって、被害者及びその家族の人生は、一瞬にしてどん底に落とされてしまう。被害者及びその遺族は、今後の人生で二度と心の底から笑える日が来ないかもしれない。そんな被害者のやり場のない気持ちを代弁できるのは検察官しかない、と刑事裁判を通じて私は思った。そのとき、私は、弁護士も魅力的だが、検察官という職業も大変魅力的だなと思った。

  その後、家族や友人の支えのおかげで、私は5回目の受験で司法試験に合格した。合格後、弁護士・検察官・裁判官の法曹三者の研修を積む司法修習が始まり、私はそのとき初めて、弁護士の具体的活動内容を知った。弁護士会には犯罪被害者支援委員会という委員会があり、犯罪被害者の支援を行っていること、弁護士であれば、刑事事件の被害者だけでなく、民事事件の被害者を救済することもできる等、検察官とは異なる幅広い被害者救済が可能であることを知り、幅広く被害者救済を図ることができる弁護士になることを決めた。

  弁護士登録をした現在、一人でも多くの被害者を救済できるよう日々研鑽を積んでいる。平成20年の12月には、刑事裁判の被害者参加制度がスタートし、被害者参加弁護士が犯罪被害者の代理人として刑事裁判に参加し、犯罪被害者の気持ちを代弁できるようになった。亡くなった友人は、被害者参加制度についてどう思っているだろうか。