| 当事務所の弁護士・司法書士が時代をとらえたコラムを発信します。ご期待ください。 |
コトバのチカラ 弁護士 吉田誠司
私は弁護士会でずっと広報委員会に入っております。09年度は副会長をしていますが、そこでも広報担当をしています。そのせいもあり、短い言葉で、ものの在り様を効果的に伝えるということに、とても興味を持ってきました。巷のいわゆる「キャッチコピー」とか「キャッチフレーズ」は、いつも敏感に鑑賞しています。
強烈に印象に残っているコピーってないですか。例えば「覚せい剤やめますか。それとも人間やめますか」。1983年から日本放送連盟が流した覚せい剤撲滅運動のCMのコピーです。これは本当に上手いですね。その後、この手の「A or B」の対比コピーがよく真似られました。「すこし愛して、ながーく愛して」というサントリーのCMコピーもなかなか余韻があっていいですよね。これも1983年の作で、大原麗子さんの特徴ある声で人気がありました。日清のチキンラーメンの「すぐおいしい すごくおいしい」もメロディと共に記憶しています。これも1984年が最初だそうです。この時代のコピーは本当にいいですね。最近ではJR東海の「そうだ 京都、行こう」というコピーは、よく見れば単純な表現ですが、やはり言葉の力でかなりの観光客を京都へ動かしたのではないかと思います。
短い言葉というのは、覚えやすくて何度も噛みしめます。そこで噛むたびに味が出る、飽きない良い言葉であれば、その言葉が強く記憶に残ったり、愛されたりして、潜在的に人を動かす力を得るのでしょう。著名なコピーライターの方が書いた本を読んだことがありますが、いいコピーは、商品を想起させる力というより、その言葉自体が人の口にのぼって話題になってくれるような伝播力のあるコピーだそうです。上記のCMコピーなどは正にそうでしたよね。
2009年の10月、愛媛県松山で日弁連のシンポジウムがあり、参加しましたが、松山市では「ことばのちから」イベント事業というのをやっていて、市電のボディや街灯などに、市民から募集した短いコピー文を掲示していました。「明日より今日の自分にVサイン」とか「ピカソはピカソ。私は私」とか「みんな誰かの宝物」とか、素朴ですが良い言葉が並んでおり、路面電車のレトロなムードと相まって、とても気分のいい街づくりになっていました。言葉には本当に力があります。魂が宿っています。
京都弁護士会も、数年前にキャッチフレーズの公募をしました。とてもたくさんの作品が全国各地から寄せられましたが、選ばれたのは「きっとある あなたを支える 法と智恵」という作品です。以後、弁護士会のHPやポスター、チラシ、名刺などに使っています。好き嫌いはあるかも知れませんが、私は「きっと」という言葉の期待感や柔らかさ、「支える」という言葉の安心感と弁護士の立場の表明、末尾が「智恵」という言葉で終わるひねりや余韻、「ある」「支える」と連続する音韻など、たいへん優れた作品だと思っています。
ちなみに私も最近一つ作品を作りました。2009年12月に弁護士会では「第39回憲法と人権を考える集い」というイベントを宝ヶ池の国際会館で行いました。そのタイトルです。このイベントはノーベル賞の益川敏英先生の講演・インタビューと、「戦争の記憶を語り継ぐ」活動について京都と沖縄の中高大学生からの発表でした。1100人もの方に来て頂けました(当事務所の依頼者、関係者の方も多数お越し頂きありがとうございました)。敗戦後64年が経ち、戦争体験者が高齢化し、戦争遺跡も風化している現在、戦争の真実の姿を次の世代へ確実に伝えることが急務です。そんな折、唯一の地上戦の行われた沖縄では、ひめゆり学徒隊が動員された旧日本陸軍病院跡で「はえばるユース」という高校生主体のグループが見学客に向けて平和ガイド活動をしていると聞きました。そこで京都からも中高生を公募して、沖縄で本物の戦争遺跡を見て、同世代がやっている「伝える」活動を調査してきてもらおうという企画です。戦争体験者から体験していない者へ。体験していない者から、さらに他の人へ。それが出来るか。どれほど難しいか。それを考えてみようという企画でした。このイベントのタイトルとして、私は「戦争の記憶 〜君へ伝える 君が伝える」というコピーを付けました。自分ではとても気に入っていますが、どうでしょう?
【2010年2月記】
春の引越しと賃貸借契約 弁護士 平尾嘉晃
3月4月になると、引越しをされる方も多いと思います。
アパートやマンションなどを引っ越すときに、よく問題となるのが「敷金・保証金トラブル」といわれるものです。本来、敷金や保証金というものは、家賃の不払いや不法行為などで損傷などがあった場合に備えて預け入れられる担保金という性格をもちます。ところが、この敷金から、本来差し引くことのできない、クロスなどの張り替え代金(いわゆる内装リフォーム費用)、室内クリーニング代金などが差し引かれ、敷金の一部あるいは全部が返ってこない、さらには費用の追加請求をされるということがあります。こうしたトラブルが、「敷金・保証金トラブル」といわれるものです。
こうしたトラブルに対する回答は、以下のとおりとなります。
まず、アパートやマンションは、そこに住んで生活するために借り受けているものです。つまりそこで生活をする訳ですから、生活に伴う様々な損耗や汚れが生じることは当たり前であり、そのために家賃を払っているのです。ですから不法行為(故意あるいは過失)による損害賠償義務が発生するような損耗や汚れがない以上は、その回復費用を敷金から差し引かれる根拠はないといえます。
また、たとえ、不法行為による損害賠償義務が発生するような場面であっても、損耗をした部分の原状回復費用を全額負担しなければならないかというと、そういうわけでもありません。損害賠償義務を負うのはあくまで、現在の価格相当部分となります。したがって、何年か入居した後に引越しする場合には、この何年か使用した後の価値相当額を負担すれば足りることとなります。これは「経年劣化」という考え方であって、内装材については耐用年数が6〜8年ほどといわれており、耐用年数が過ぎれば残存価値は10%程度となります。
もし、普通に使っていただけなのに敷金や保証金が返ってこないということで、お悩みの方がおられれば、京都には、京都敷金・保証金弁護団という弁護団もありますので、一度そちらにご相談下さい。
また、敷金問題以外にも住宅賃貸借の契約条項については、さまざまな裁判例があります。最新の裁判例事情については、当事務所のHPの「住宅賃貸借に関する裁判例」をご参照下さい。
【2010年3月記】
弁護士のやり甲斐とは? 弁護士 宮ア純一
弁護士のやり甲斐とは、一体どんなものでしょうか。答えは一つではなく、個々の弁護士の価値観により様々な答えがあると思います。
依頼者の方から感謝の言葉をもらったとき、民事裁判で勝訴したとき、刑事裁判で無罪判決をとったとき、これらはいずれも弁護士としてのやり甲斐を感じる一場面でしょう。
最近、私が弁護士としてのやり甲斐を感じたのは、過去に担当した少年事件のA少年が今ではすっかり更正して、真面目に頑張っているということを偶然にも人づてに聞いたときでした。その少年A君は、私が初めて担当した少年事件の少年でした。
少年事件の審判結果には、大きく分けると@少年院送致、A保護観察、B不処分などがあります。B不処分というのは、大人の刑事裁判でいう無罪にあたると言われたりしています。裁判官によっていずれの処分が下されるかは、少年の更生にとって最も適しているのはどの処分かという基準で判断されます。少年事件の制度上、少年の更生が重要視されているのです。したがって、仮に、少年事件の弁護活動がうまくいって、少年に不処分が下されたが、その後、またその少年が事件を起こしてしまっては本末転倒ということになります。
少年事件では、少年にいずれの処分が下ったにせよ、その少年が真に更正できた場合にはじめて裁判に勝ったということができるのかもしれません。ただ、多くの少年事件の場合、その少年が真に更正できたかどうかはわからないまま弁護活動は終わってしまいます。
そんな少年事件において、私は偶然にも、A少年の更正を第三者から耳にしました。私は、その第三者に対し、A少年の事件ことやA少年の少年事件を私が担当したことなどは一切話していませんでした。しかし、その第三者は私に、「A少年は、以前はやんちゃだったが、ある事件をきっかけに今ではすっかり更正して、もう事件を起こすようなことは絶対にないと思います。」と話しました。
私は、この話しを聞いたとき、はじめて私もA少年も今回の少年事件に勝ったんだなと思いました。第三者から話を聞いたのは、少年事件が終わってから数年後のことでした。
少年事件が終わって一緒に家庭裁判所を出るとき、私がやっと釈放されたA少年に対し、「まず何をしたい?」と聞いたところ、「ラーメンを食べたい。」と言ったA少年の言葉が今でも忘れられません。
【2010年4月記】
司法書士試験 司法書士 桝田美佳子
今月の初め、法務局にいくと、「司法書士試験の願書は4階へ」という貼り紙を見かけ、「あっ、今年も受験シーズンがきたか」と少し懐かしく思いました。試験まであと2ヶ月をきり、受験生は目の色を変えて机に向かっていることでしょう。
司法書士になるための「司法書士試験」は願書受付が5月、1次試験が7月、2次試験が10月に行われ、最終合格発表は11月になされます。昨年は921名(男714名・77.5% 女207名・22.5%)が合格しました。
難関資格試験と言えば「司法試験」が周知されていますが、司法書士試験も合格率が毎年約3%の難関試験です。試験科目は、実は司法試験より多く、憲法・民法・商法(会社法)・刑法という実体法から、民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・供託法・不動産登記法・商業登記法といった手続き法に司法書士法と11の法律にも及び、幅広い法律知識が求められます。そのため、独学で勉強するのは難しく、ほとんどの受験生は、いわゆる「受験予備校」に通って勉強をしています。勉強をはじめた1年目で合格する受験者は稀で、ほとんどの受験生は数年間予備校に通うことになるので、自然と受験仲間ができ、教えあい、励まし合って、長い(!?)受験時代を乗り切っていきます。
受験予備校では、受験科目の講義や答練以外に、「願書はいつ頃出せばいいのか」「受験日前日及び当日の過ごし方」といった「受験」に関するレクチャーもありました。「(マークシートが塗りにくいから)鉛筆は尖らせすぎない」「時計は2個持って行く」「お昼休み(1次試験は午前と午後に分かれている)には脳のエネルギーであるブドウ糖をとる」など...。「そんなことまでわざわざ教えなくても...」と思うでしょうが、年に1回の試験のために猛勉強しているのですから、「参考になることは何でも聞いておこう。」と私も受講した覚えがあります。
私たちの仕事は、依頼者の権利に深く関わる仕事だからこそ、試験のハードルが高いのです。
受験生のみなさん、がんばって下さい!
【2010年5月記】
例のあれ 弁護士 吉田誠司
みなさん、この写真のおもちゃは、何という名前かご存じですか。縁日や駄菓子屋で売っていた例のあれ、です。
これは「吹き戻し」というそうです。プーッと吹くとヒュルヒュルと伸びて、吹くのをやめるとクルクルッと戻ってくるから、吹き戻し。他愛もない玩具ですが、何か心なごむオトボケ感がありますよね。これを作っている工場が淡路島にあり、休みの日に子どもを連れて行ってきました。淡路市にある株式会社八幡光雲堂さんというところで、この工場から何と全国の80%の吹き戻しが生産されているとのこと。海外にも輸出され、英語では「blow outs」というそうです。
大人500円、子ども300円で製作体験ができるので、やってみました。まず、この「ヒュルヒュルと伸びて、クルクルッと戻る」仕掛けはどうなっているかというと、筒状になった細長い紙に、細い針金がまっすぐ一本張り付いて通っていて、これをくるくる巻くとクセが付いて、針金の弾性で、伸ばしても巻き戻ってくるという仕掛け。くるくる巻く工程は、実は「巻く」のではなく、紙の筒の中央部分を釘に引っかけてそこを支点にして右左と数回「しごく」ことで針金にクセがついて、勝手にくるくる巻きが出来上がります。この工程が楽しいところ。最後に笛付きの口元をテープで紙筒に取り付けて出来上がり。面白いので大小いくつも作ってしまいます。
工場には、変わり種の吹き戻しが展示されており、遊べます。この写真は、ヘルメットにたくさん取り付けて、1箇所で吹く玩具。「怒髪天を突く」なんていう言葉を思い出しますが、なかなか肺活量が要って大変でした。
たまには、こんな手作り玩具で気分転換もいいものです。
【2010年6月記】
マルチ商法に厳しい規制を 弁護士 平尾嘉晃
マルチ商法の被害者弁護団で事務局長をしています。学生の街・京都では、大学生やフリーターら若い世代が悪徳業者のターゲットになるケースが目立ちます。
通信販売会社アースウォーカー(大阪市)の事件では通販カタログ事業を装って約5500人から22億円余り、インターネット関連会社ライブリー(同)が端末機販売で「ネズミ講」を営んだ事件でも約1900人から7億円余りを集めました。長引く不況による就職難もあり、学生らは「自分で起業できる」「新しいビジネスモデル」などの誘い文句に引き込まれ、被害が広がっていきました。
マルチ商法の正体は、詰まるところはリクルート(人集め)商法。だれかを誘い込んで契約させれば、その契約金の一部を間接的に利益として受け取れるというものです。マルチ業者は「そのうち何もしなくてもお金が入ってくる」と惑わせ、ネズミ講のピラミッドが大きくなってくれば、被害者も「寝ていても収入が得られる」と引きずり込まれていく。マルチ商法では、そんな点が「大きな魅力」になっているのです。
ここで、みなさんも考えてみて下さい。商売の基本は、いかに良い物や良いサービスを提供するかにあるはずです。人を集めるだけで利益が上がるやり方は、そもそも商売といえるでしょうか。先に紹介した二つの事件は結局、商品の内容は何でもよく、物の販売やサービスの提供という体裁だけを取り繕って、人集めで利益を上げている組織だったのです。
先の2事件の組織幹部の中には、マルチ業者を何社も渡り歩いた経験のある人物も多く、「勧誘役」や「説明役」など役割分担をした勧誘方法のマニュアルや、誘い込む相手の人柄や興味を調べた「カルテ」を作るなど、その手法は組織的で巧妙なものでした。
現在の法規制では、ネズミ講は全面禁止であり、2事件の首謀者はいずれも、無限連鎖講防止法違反の罪で刑事責任を問われました。しかし、物の販売やサービスの提供という事業に絡み、人集めで利益を得ることは、特定商取引法ではあくまで部分的な規制にとどまっています。このような法規制のあいまいさが、あらゆる抜け穴を見つけてもうけようとする悪徳業者の暗躍を許してしまっているのです。
商売の基本をないがしろにする点では、違法なネズミ講も、特商法で部分的に規制されている連鎖販売取引も同一といわざるを得ません。日本経済の健全な発展のため、そろそろマルチ商法全体に対して、厳しい法の網をかける時期にきているのではないでしょうか。
【2010年7月記】
裁判員裁判の弁護人を経験して
弁護士 宮ア純一
先日、裁判員裁判事件の弁護人を務めました。これまで裁判員裁判の模擬裁判や裁判員裁判研修等は参加してきましたが、実際の裁判員裁判の弁護人になるのは初めてでした。
事案は、殺人事件で、起訴から約6か月後の裁判となりましたが、最終的な判決は執行猶予付きの判決でした。
これまでの刑事裁判と異なり、一般市民の方々が裁判官と同様の立場で刑事裁判に参加することになるので、どのような弁護活動を行えば一般市民の裁判員の方々により理解してもらえるのか悩みました。法律用語等の専門用語はなるべく控えることはもちろんのこと、どのような証拠をどのように提出すれば裁判員の方々に理解してもらえるのか試行錯誤を重ねました。
殺人罪でしたので、厳しい判決が下ることを懸念していましたが、一口に殺人といっても、いろいろな経緯や動機、種類があり、最終的には、われわれ弁護人の主張を裁判員に理解してもらえたと実感しています。判決理由にも、われわれの主張に沿った理由付けがなされており、裁判員の方々に冷静で慎重な判断をしていただけたという感想を持ちました。
現在も、日本全国で裁判員裁判が行われていますが、日本の刑事裁判がよりよいものになるよう皆様の冷静かつ慎重な判断によるご協力を宜しくお願いいたします。
【2010年8月記】
遺言と成年後見制度 司法書士 桝田美佳子
先日、宇治市のある町内会で「遺言と成年後見制度」の出前講座をしてきました。
私が所属する「社団法人成年後見センター・リーガルサポート」は司法書士で組織する法人ですが、毎年、成年後見制度の周知と理解を広げるために、地域包括支援センターや介護施設で、無料で「遺言と成年後見制度」講座を開催しています。私も2年前から講師をしていますが、今年は特別養護ホームの施設職員と地域住民の方を対象として1時間半の講義をしてきました。
「遺言と成年後見制度の講座」と聞くと、「なんでその2つの制度を一緒に講義するの?」って疑問に思いますか。
「遺言」は「自分の死後の自己財産の処分方法」、「成年後見制度」は「生きている間の自己権利の擁護」ですので、この2つの制度は、ともに「自己意思の尊重」という共通点があるのです。
講座を始める前に、成年後見制度を知っているかを受講者に尋ねたところ、知っていたのは15〜16人中ほんの数人でした。一般の方には、「どんな人が、どんな場合に制度を利用するのか」がわかりにくいようです。
後見制度が施行されて今年で10年になります。成年後見人選任の申立件数は、毎年増えており、平成21年度は2243件で、施行当時の平成12年から比べると約2.8倍となっています。しかしながら、制度自体の認知度はまだまだ高くありません。利用者は認知症高齢者の10分の1以下と言われています。
施行当時は、親族が後見人に選任される事案がほとんどでしたが、現在では約3割が弁護士、司法書士、社会福祉士などの第三者後見人が選任されており、その中でも司法書士の選任件数が一番多いのです。
成年後見センター・リーガルサポート京都支部では毎週土曜日に、京都司法書士会内で無料相談会(要予約)を実施していますので、制度についてお聞きになりたい方はご予約のうえご来所ください。
【平成22年9月記】
スピーチ 弁護士 吉田誠司
いろいろなシンポジウム、会議、宴席に出ていると、スピーチが上手い人、イマイチな人が必ずいます。市長や知事などの挨拶を見ていますと、祝辞をしたためたものを懐から取り出されますが、少し読まれて途中からしまってしまい、後は自由にお話をされ、最後に祝辞を壇上に置いて帰られることがあり、流石だなあと思います。2008年、赤塚不二夫さんの葬儀でタモリさんが読んだ弔辞も感動的でした。書いてきたものを読んでいるようでしたが、白紙だったとも言います。白紙かどうかよりも、内容と話し方が感動的でした。
さて、上手いスピーチの特徴は何でしょうか。
1,まず、「時間が短い」こと。これは、それだけで上手く見える大事なコツのようです。しかし、準備をしていないと、かえって冗長になるようで、短くはならないものです。
2,「原稿を読まない」こと(視線が上がること)。これは原稿を用意しないのとは違います。準備をちゃんとし、原稿は作った上で本番では読まないようにしている人は上手いと思います。それは「頭に入っていて立派に見える」ということだけではなく、もっと心理学的な効果です。話し手が下を向いてしまうと、聞き手もつられて下を向くか、目をつむるか、よそ見をしてしまうものです。「目は口ほどにものをいう」わけで、視線を聴衆へ向け続ける人は引き込まれます。
3,「聞こえる」こと。台詞を噛んだりすることなどより、自分の声がそもそも聞こえているか(マイクの調子、使い方)、早口になっていないか、男性なら声が低すぎないか、女性なら高すぎないか、一本調子ではないか等ということを自覚しているかが大事なようです。そもそも物理的に聞きづらいスピーチは、かなり苦痛です。
4,「心がこもっている」こと。たとえ5分のスピーチでも、誰に聞かせるのかを事前に調べ、伝えたい内容を吟味し、分かりやすい言葉を探して、十分に準備したスピーチは、感動します。しかしこれが出来ていても、1〜3をないがしろにしているために上手く見えないスピーチが意外と多いのではないでしょうか。
一言で言うと、「準備」に尽きるようです。タモリさんの弔辞は、その場のアドリブではなく、間違いなく心のこもった準備をした文章であったと思います。しかし本番では内容は既に頭の中に入っていたので、あえて白紙の弔辞を持参されたのではないでしょうか。声といい、間の取り方といい、姿勢といい、素晴らしい弔辞でした。最後の「赤塚先生、本当にお世話になりました。ありがとうございました。私もあなたの数多くの作品の一つです」は、後世に残る名言だと思います。
【平成22年12月記】
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