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2009年 リレーコラム     


今年から当事務所の弁護士・司法書士が時代をとらえたコラムを発信します。ご期待ください。                


所長からのご挨拶    弁護士 中村利雄

  明けましておめでとうございます。

政治、経済とも未曾有(みぞう)の混乱状態の中で新年を迎えましたが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。今後ともきびしい状態がつづくものと思われますが、このような時代であるからこそ、気力を充実させ、知恵を働かせてこれに向かわなければならないと思います。

 当事務所は、時代の波に流されることなく、弁護士、司法書士、事務局一丸となって、充実した法的サービスを提供してまいります。事案によりましては、皆様方のお耳に辛い言葉を申し上げることがあるとは思いますが、最良と思える法的サービスを提供するものとしてご容赦願います。

本年が皆様にとりまして、最良の年になりますようお祈り申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
【2009年1月記】



 公益通報者の保護  弁護士 吉田誠司

  後を絶たない食品の偽装事件、自動車会社のリコール隠し、医療事故、残業代の不払い、役所の裏金づくりや給与の不正受給・・。こうした事件の中には、企業や組織の内部告発で発覚したものが多くあります。

組織には自己防衛の本能があり、不正を自ら明らかにすることは期待しがたいものです。それでも組織の一人一人の中には、不正を目の当たりにし、何とか社会へ知らせなければと思う人が必ずいます。これを「公益通報」とか「内部通報」といいます。

 公益通報をする人のことを、英米ではwhistleblower(ホイッスルブロウワー)と呼びます。笛を吹いて他人に危険を知らせる人。しかし、この笛を吹くには大変な勇気がいります。正しい行動なのに、それを「密告」と非難する組織。自分だと分かれば辞めさせられるのではないか、左遷されるのではないか、取引を打ち切られるのではないか、会社がこれでつぶれれば皆が職を失うのではないか・・。いろんな悩みを乗り越えた末に、その人は笛を吹きます。

だから、ときに笛の音は小さく、短く、ヒョロヒョロと頼りないものです。そのかすかな音を聴き取って勇気づけたり、どこに向かってどんな笛を吹くべきかをアドバイスしたり、皆に聞こえる音に増幅したりする仕事も必要です。社会のためにリスクを冒して笛を吹いてくれる人をバックアップし、保護することが必要なのです。

京都弁護士会では、公益通報をしようとする方向けの相談専用電話(075−231−2337)を設けています。直接通報を受け付けることはできませんが、「どの機関に通報するのがよいか」「通報の際どのような資料が必要なのか」「資料を持ち出しても罪に問われないのか」といった悩みに弁護士がお答えします。

また、私自身は京都市の制度に基づき、市職員の不正について内部通報の窓口を引き受けています。匿名での通報も可能です。

 2006年4月から、日本でも「公益通報者保護法」が施行されました。企業の不正を取り締まる法律や刑法など約400種類の法律について、違反行為の通報者を事業者が解雇したり、降格させたり、派遣契約を打ち切ったりすることが禁じられています。通報の対象となる法律違反や保護の範囲・要件がまだまだ厳しいとは思いますが、この制度を通じて、これまで隠されてきた社会悪が少しずつでも正されるようになってほしいと思います。

【2009年1月記】


 犯罪被害者の一歩  弁護士 吉田誠司

  

犯罪被害者が刑事裁判の中に「参加」できる制度が平成20年12月1日から施行されました。殺人や傷害致死、業務上過失致死傷など、一定の重罪に限られますが、これまでは刑事裁判に常に関わっていきたくとも「傍聴席」にしか席がなかった被害者が、法廷のバー(傍聴席と当事者の席を分ける柵)の中へ一歩踏み出し、検察官の隣に「参加人」の席を確保することができるようになりました。参加するしないは、被害者や遺族の全くの自由です。参加した被害者は、被告人や証人に質問をしたり、検察官とは別に自ら論告求刑をしたりすることもできます。被告人に弁護人が就くように、被害者も自分の弁護士を選んで参加することもできます。資力のない被害者には国選の弁護士を付ける制度もできました。

 こうした新しい制度に対しては、「被告人が萎縮して言いたいことが言えなくなるのではないか」等、伝統的な刑事裁判のあり方からは問題だとする意見も弁護士の中にあります。私は、依頼があれば刑事弁護もしますし、(社)京都犯罪被害者支援センターの専門委員・理事として犯罪被害者問題に関わってきてもいるので、両方の立場からの思いがあります。

 しかし、被害者に「新しい選択肢」ができたことは歓迎すべきだと思います。重大な犯罪の被害にあった本人や遺族が、再び立ち直って社会の一員として生きていくには、事件ごとに、その人ごとに、それぞれの長い苦しみの過程があります。「受けた身体的、経済的被害からの回復だけで精一杯」、「被告人にあうのも怖い。刑事裁判など行きたくない」、「一体何が起きたのか刑事裁判の中で真実を知りたい」、「被告人に相応の刑罰が与えられるのを見届けなければやりきれない」、「亡くなった者に代わって被告人に直接思いをぶつけたい」・・いろいろな場合があります。回復の過程で、その人が選べる選択肢、支援のあり方は多い方がいいはずです。

 ただ、気になるのはこの制度の裏面です。刑事裁判に「参加しない」という選択をした被害者、あるいは参加できない事情がある被害者が、実際には相当の数になるでしょう。そうした方が、そのことで自分を責めたり、二重に苦痛を感じないようにする配慮が必要だと思います。被害者参加制度も、被害者にとっての「一歩」ではあり、制度を利用しない方のことも含めて、うまく活用していければいいと思っています。

【2009年1月記】


 集合的権利保護訴訟  弁護士 平尾嘉晃

 「○○弁護団が、△△に対して一斉提訴。被害総額は〜円」といったニュースを目にされることがあると思います。たとえば、最近では、薬害事件や耐震偽造事件あるいは投資詐欺事件など、古いところでいえば、水俣病や豊田商事事件など。同種の問題で、多数の被害者が発生するという事件は、昔から数多くありました。

ところが、こうした多数の被害者が発生する事件で、被害者が集団的に提訴するシステムが、実は、日本では非常に遅れているということをご存じでしょうか?日本の法律は大陸法に由来しますが、基本的には、被害救済を訴えるのであれば、被害を受けた個々人が、個人で、もしくは弁護士等に依頼するなどして訴訟を起こす必要があります。しかしながら、個人情報の漏洩問題や、食品偽装問題あるいは消費者事件のように、個々の被害額が訴訟費用に比べて少額であり訴訟コストがかかる場合や、また、個人が大企業を相手に立証活動を行うのが困難である場合では、弁護団が訴訟を行っても、原告として訴訟に参加する被害者がごく一部に過ぎないケースがままあります。そのため、結局のところ、大部分の被害回復が実現されず、その反面、加害業者の違法収益が剥奪されないままということになってしまいます。

 このように、大量被害が出ているが、個々の被害が少額で拡散的であるため、日本の訴訟システムになじまず、被害が放置されているものを、いかに救済していくか? 実は、これは日本だけではなく世界的な課題とされています。

個々人が訴訟を起こさなくても、代表者が訴訟を起こせばよいというシステムとして、英米法の国々では、クラスアクションという制度があり、集合的な権利保護の制度として機能しております。この制度をそのまま、大陸法に由来する日本に取り入れることについては、様々な困難が伴います。また、代表者の選定の仕方についても、クラスアクション制度がそのまま日本になじむとは言い難い点があります。しかし、こうしたクラスアクションとは異なり、認証を受けた一定の消費者団体が、被害救済のために、個々人に替わって訴訟を行うというシステムであれば、日本にも十分導入可能と思われます。

実際、大陸法であるヨーロッパ諸国では、ここ2〜3年ほどで、消費者団体等一定の団体が、個々の被害が少額で拡散的な権利の保護のため、個人に替わって訴訟が行えるという制度を、新しく立法する国が増えております。

日本では、平成19年に消費者団体訴訟制度という新たな制度が立法され、不当な約款の使用差止や不当な勧誘行為の差止等に限って、消費者団体が訴訟提起できるという制度が導入されました。今後は、この制度をさらに進めて、消費者団体が、差止訴訟に限らず、個々人の被害回復に向けた損害賠償制度や不当利得返還訴訟を提起することができるよう立法改正することが、是非必要と考えております。

【2009年1月記】
 

 裁判員制度が始まります  弁護士 宮ア純一

今年は、いよいよ裁判員制度が始まります。市民の皆様が刑事裁判に参加されることになり、これまでの刑事裁判の様相がずいぶん変わってくると思います。法律の知識や刑事裁判等に先入観のない市民の皆様に、一般常識に従った適切な裁判を行っていただくことにより、日本の刑事裁判がより良い発展を遂げられたらと思っています。

京都弁護士会でも、裁判員制度に対する皆様のご理解をいただけるよう裁判員制度の説明会やイベントを行っていますし、個々の弁護士も裁判員制度向け様々な研修を積んでいます。私も、裁判員制度の研修会に参加したり、裁判員制度の模擬裁判に参加したりして、裁判員の皆様にわかりやすい裁判を行えるよう研修を積んでいます。

裁判員制度を通して、市民の皆様と弁護士との距離が近づき、弁護士が親しみやすいものになればと思っています。

【2009年1月記】


 不動産取引と税の申告  司法書士 桝田美佳子
 
 

 今年も税の申告の時期になりました。税金に関する専門家は税理士ですが、不動産取引に関わる税金は多く、登録免許税、不動産取得税、贈与税、相続税等々…、私も相談をうけることがあります。それらの中で、この時期に申告しなければならない「贈与税の特例」について説明します。

 贈与とは「当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意志を表示し、相手方がそれを受諾する事によって成立する契約です。例えば、子供が住宅を取得するための資金を親がだすのは「金銭の贈与」になりますし、親が持っている土地や建物を無償で子供名義に変更するのも「不動産の贈与」になります。贈与税は税率が高く、例えば1000万円の土地を贈与すると税率は40%にもなります。しかしこの高額な「贈与税」が課されない特例がありますので、この制度を上手に利用しましょう。

(1)相続時精算課税

 親から子への生前贈与について2500万円の非課税枠を設ける制度です。通常2500万円の贈与であれば970万円もの贈与税がかかるのに、これが0円ですみます。適用されるのは@贈与者が65才以上である親A受贈者が20才以上の贈与者の推定相続人である子である場合です。更に、住宅取得等のための金銭の贈与であれば、3500万まで非課税になる特例(適用要件がありますので詳しくはお問合せ下さい)もあります。

(2)配偶者控除

 夫婦間で居住用不動産などの贈与があったとき、基礎控除額110万円のほかに最高2000万円までの非課税枠を設ける制度です。適用されるのは@婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与A受贈者の居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭B翌年の申告期間期限までに実際に居住しその後も引き続いて居住する見込みであることです。

 どちらの制度も贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに申告が必要で、申告し忘れると通常の贈与税が課されてしまいます。あとから高額な贈与税の通知をみて驚かないために、この時期にきちんと申告し、上手に節税しましょう!

【2009年3月記】


登録免許税の税率の軽減措置の延長
           司法書士 桝田美佳子


不動産取引に関わる税金は多く、今回は登録免許税についてです。

不動産の所有権を移転する登記、抵当権を設定する登記、名義人の住所を変更する登記...いろんな登記申請がありますが、登記するには登録免許税がかかり、これは登記申請時に納付します。

税率・税額は法令で決められており、例えば、所有権移転登記の場合、取得した原因が売買なら固定資産評価額の20/1000の金額、相続なら固定資産評価額の4/1000の金額、所有権登記名義人の住所変更なら不動産1コにつき1000円など。

今年は景気対策として、いろんな減税が打ち出されています。不動産に関するものでは住宅ローン減税が大きいでしょう。そして、あまり大きく取り上げられていませんが、登録免許税については軽減措置の延長があります。

 

(1)土地の売買による所有権移転登記

前述の通り、不動産を売買を原因として取得した場合、所有権移転登記にかかる登録免許税は固定資産評価額の20/1000の金額ですが、平成18年4月1日より「土地」については税率を10/1000とする特別措置法が実施されており、登録免許税が半額になっていました。今年の4月1日からは13/1000の税率に引き上げられる予定でしたが、平成23年3月31日まで10/1000の税率のままで、軽減措置が延長されました。

 

(2)住宅用家屋

住宅用家屋については、住宅専用面積が50u以上であることなどの一定の条件(詳しくは司法書士までお尋ねください)を満たす住宅については、所有権保存登記(新築で初めて所有権の登記をする場合)が課税標準価額の4/1000→1.5/1000の金額に、所有権移転登記が固定資産評価額の20/1000→3/1000の金額、資金借入の抵当権設定登記が債権額の4/1000→1/1000の金額になどの税率の軽減措置が延長されました。

 

登録免許税に関しては、その他、インターネットによるオンラインを利用して所有権移転登記申請を行った場合には、法令に基づいて計算した税額の10/100を乗じた額(上限5000円)が軽減される措置もあります。

いずれの場合も、ご自身の場合にはあてはまるかどうか司法書士に確認してもらいましょう。

【2009年4月記】


 副会長会務の合間に
  
−ダッチオーブンってご存じですか? 弁護士 吉田誠司

4月1日から、京都弁護士会の副会長に就任しました。任期は1年です。会長1名に対し、京都では副会長4名がいます。副会長は、今年度は全員同世代の30代後半から40代前半の弁護士です。京都弁護士会のエリアは京都府全域で、4月現在約450名の会員がいます。京都府の人口に比べた弁護士の密度は京都は全国でも多い方に属します。ただ、大半が京都市内に事務所をかまえており、北部や南部にはまだ少ない状況です。今年はいよいよ5月21日から、裁判員裁判や、被疑者国選第2段階(ほとんどの刑事事件で、捜査の段階から国選で弁護士が付く制度)が始まります。不景気で中小企業のさまざまなトラブルも増えてくると思われます。ますます弁護士の存在意義が増してきますので、市民のために弁護士が活躍できる基盤を作っていきたいと思います。

 

さて、今回は最近ハマっている趣味のお話を。「ダッチオーブン」というのをご存知ですか。オーブンといっても形は鍋です。重い鉄製の鍋で、ふたの上にも炭火を置いて上下から加熱するのでオーブン料理ができるのです。その昔、アメリカ開拓時代に、オランダ人が持ち込んだ野外料理用の鍋なので、ダッチ(オランダの)オーブンといわれています。

 これで作るローストチキン(鶏の丸焼きですね)は最高。一匹丸々の鶏のおなかにニンニクや香草を詰めて、玉ねぎ、ジャガイモなどを敷いた上にそれをおいて、ダッチオーブンで1時間ほど焼きますと、こんがり焼き目がついて、ニンニク風味の肉汁が玉ねぎ、ジャガイモにも滲みだして、見た目も味も豪勢この上ない。参加者は大喜びです。冬場はキャンプも行けないので、焼きいもを作ってました。ホームセンターで小砂利を買ってきてダッチオーブンに詰めて、その中にサツマイモを丸ごと入れて石焼き芋です。炭火にあたって暖をとりながらイモが焼けるのを待つ。簡単かつ優雅なひとときです。これからキャンプシーズンになりますが、今年は余り行けないかも。それでも、次は何を料理しようかと考えるだけで楽しみです。
【2009年5月記】

野外料理の主役 今回はサツマイモ。
1時間で...
こんなにおいしそう!
(おいしいんです!)



 ブラジル見聞記  弁護士 平尾嘉晃

日本弁護士連合会及び京都弁護士会の共催で、平成21年の3月末から4月にかけて約1週間、ブラジル、サンパウロに行ってきました。

 南米ブラジルは、日本のちょうど反対側に位置し、フライト時間は、片道でも実にまる1日以上(ドバイ経由のエミレーツ便の場合、関空→ドバイが約12時間・ドバイ→サンパウロが約15時間)という日本からみて「世界で最も遠方の国」といえます。長距離の移動は大変でしたが、おかげで、今後、ヨーロッパやアメリカに行く機会があっても、「ブラジルに比べたら近いもんだ。」と思えるでしょう。 

 

 ブラジルでは、消費者被害あるいは環境(公害)被害などにおいて、加害企業に対して、消費者団体、行政機関、司法省などが、差止めの訴訟あるいは損害賠償の訴訟を行うことができる法律があります。

 今回の旅行の目的は、日本の民事訴訟学会でもあまり知られていないこの制度の運用実態を調査することでした。ヒアリング調査先は、法律制定者(サンパウロ大学の高名な教授で、実は日系ブラジル人の方でした。)、実際に訴訟を担当している行政機関、消費者団体、検察庁さらにはサンパウロ弁護士会など合計6カ所で、他にも連邦裁判所裁判官、サンパウロ州裁判所裁判官などにも話をうかがってきました。

日本では、全く考えられないことなのですが、こうした差止め訴訟や損害賠償訴訟を担当するのは、ブラジルの場合、ほとんどが検察庁となります。単に刑事事件の訴追官にすぎない日本の検察官とは全く異なり、ブラジルの検察官には、「公益保護者」という、日本よりはるかに広い役割があるようでした。また、日本では、今まさに「消費者庁」が設立されようとしており、消費者保護を目的とした行政機関がようやくできようとしておりますが、ブラジルではこうした行政機関(一種の特立行政委員会)が、既に訴訟や和解あっせん、相談業務などを行っているということでした。ブラジルの新憲法制定は1988年と比較的新しいため、人権リストも最先端のものが組み込まれているようです。消費者保護の法律が充実しているのは、この新しい憲法に、消費者保護が基本的人権の一つとして謳われていることも多きな要因のようでした。

 

 ブラジルの法制度は、日本と同じ大陸法の系統に属しておりますが、こうした大陸法でも集団的な損害賠償制度を取り入れることができるという一つのモデルケースといえます。現在、国会で審議中の「消費者庁」構想では、附則で「消費者庁関連3法の施行後3年を目途として、加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め、多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益をはく奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるものとすること。」という規定が設けられる予定です。

 

 今回のブラジル調査結果については、平成21年8月8日(土曜日)に京都弁護士会において、報告会を兼ねたシンポジウムを開催予定ですが、今後、3年を目途に設けられる違法収益はく奪・被害者救済制度に対しても積極的に提言をしていこうと思っております。

【2009年6月記】


 事業承継のすすめ  弁護士 宮ア純一

日本の企業の90%以上を占めると言われている中小企業は、現在、事業承継の時期をむかえています。高度経済成長期に創業した中小企業経営者の多くは退職年齢にさしかかり、事業経営を後継者にバトンタッチする必要性が出てきています。

 

  しかし、事業承継と言っても、一朝一夕に簡単にできるものではありません。後継者の確保から相続対策等までやるべきことは多くあります。何の対策も採らずに放置していますと、いざ事業承継というときに、後継者が経営ノウハウを知らない、取引先・従業員の信頼を得られない、相続を巡って紛争が起きる等の問題が生じ、万が一これらの問題が解決しなければ廃業という事態にも発展しかねません。

  そのようなことにならないためにも、事前に、後継者候補を見つけ、その候補者を育成し、徐々に経営権を移していくとともに、自社株式や事業用資産を候補者へ承継させる等計画的な取り組みが必要です。このような中小企業の事業承継の支援については、国もその必要性を感じ、平成20年10月には、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が施行されました。

 

  経営承継円滑化法による支援には、3本の柱があります。それは、@遺留分の関する民法の特例、A金融支援、B相続税課税についての支援措置の3つです。これら3つの支援措置を利用することで、事業承継がより円滑に進められるようになります。

  3つの支援措置の具体的な中身を知りたいということであれば、ぜひ各種セミナーに参加したり、弁護士等の専門家にご相談いただけたらと思います。

 

  私も、事業承継の勉強会に参加したり、セミナーに参加したりして、皆様のニーズにお応えできるよう日々研鑽を積んでいます。先日、私が事業承継セミナーの講師をさせていただいた際、皆様の事業承継に対する熱心な姿勢に感服いたしました。

  少しでも、事業承継に興味のお持ちの方は、ぜひ弁護士等の専門家にご相談されることお勧めいたします。

【2009年7月記】


遺言って必要ですか?  司法書士 桝田美佳子

  京都司法書士会では京都司法書士会館で月〜金曜日に無料の登記・法律相談会をおこなっています。私も相談員をしていますが、司法書士という職業上、不動産に関連する内容が多く、その中でも相続が関係する相談は多いです。

 

 「遺言書はつくっておいた方がいいですか?」という質問を受けることがあります。遺言は最後の自分の意思なので、財産を世話になったあの人にあげたいなどの特別な思いがある場合はもちろん必要です。親族間に紛争がある場合も望ましいでしょう。それら以外は相続人間の話し合い(遺産分割協議)で決めればいいと思っていますが、「あ〜、こういうケースは遺言書をつくっておいてほしかった!」と思う事案もあります。その一つが「子どものいない夫婦」の場合です。

 

 民法887条から890条には相続の順位が定められています。例えば、ある夫婦の夫がなくなった場合、第1順位は妻とこども(直系卑属)、第2順位は妻と夫の両親(直系尊属)、第3順位は妻と夫の兄弟姉妹ですので、こどもがいなくて両親も他界している場合、夫の兄弟姉妹が相続人となります。夫婦が自分たちの財産で建てて長年住んできた自宅についても、夫名義であれば、4分の1の権利は夫の兄弟姉妹のものとなるのです。自宅全部を妻が相続するために、夫の兄弟姉妹に自宅の4分の1に相当するお金を払わなければならないケースもあります。「遺言書」があれば妻一人が相続することが可能なのでしょうか。

 民法1028条では「遺留分」といって、相続人が相続の権利を主張できる割合を定めており、たとえば、夫婦+こども一人の家庭で、夫が「全財産を妻に相続させる」という遺言を残していても、こどもは遺留分として遺産の4分の1の権利を主張することができます。

 では先程のケースで、夫が「全財産を妻に相続させる」という遺言を残していた場合はどうでしょうか。実は兄弟姉妹には遺留分がないので、「全財産を妻に相続させる」という遺言があれば、夫の兄弟姉妹は遺産を相続できず、妻一人が相続するのです。

 なお、遺言書により不動産を相続した場合、遺言書の検認が済んでいなければ登記することができません。まずは亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書検認申立をし、検認が済んだ遺言書を添付して相続登記をします。 

 

 「遺言」というと「高齢者が作成するもの」とお考えの方もおられるかもしれませんが、相談に来られる方は「こんなに早く逝くとは思ってなかったので、遺言書はつくっていません」とおっしゃいます。

 残された家族が安心して生活を続けるために、若い頃から保険に加入する方は多いと思います。遺言についても考えてみる機会を一度もってみてもいいのではないでしょうか。

【2009年8月記】


 船頭さんはカッコイイ  弁護士 吉田誠司
       

 9月6日(日)、若狭湾に釣りに行ってきました。弁護士会のレクリエーションとしてやっている釣りツアーです。私は、高校生まで名古屋で育ちましたが、港が近いのでよく海釣りに行っていました。弁護士になってからも年に1回位は行っていますが、今回は船頭さんに案内してもらっての船釣りということで、きっと確実に釣れる!と思い、家族を連れて勇んで行きました。ほとんど初心者の男女20人くらいで3艘の釣り船に分かれての釣り大会です。

 

 行った場所は、福井県の西端、内浦湾というところで、若狭湾のさらに内海、高浜原発があるところです。地形的にも静かな海に見えましたが、船に乗ってみるとこれが結構酔いました。朝6時に朝食食べずにオニギリ持ち込みで乗ったからでしょうか。家族の手前、平気な顔して釣っていましたが、とても「平気な顔」には見えなかったと思います。船頭さんが顔色を見て「ちょっと休もうか」と陸に30分ほど陸に揚げてくれたので、何とか回復しました。

 船頭さんは75歳位、「わしには酔うっちゅう感覚が分からんでねえ」とおっしゃる。そりゃそうでしょうプロだもの。陸に上がっている間、いろんな話しをしました。自分が幼い時に父親が戦地に行って戦死したので、この年代には珍しく一人っ子であったこと。小学校時代は、毎日毎日、海に来て魚取りをして遊んだこと、学校には行きたかったけど漁師になるしか途がなかったこと、母を看取った時はとても寂しかったこと・・・。私たちの世代(昭和40年代前半生まれ)ならまだ、こうした戦争に連なる来し方の話しは、小さい頃から聞く機会があったし、私はそれを聞くのが好きですが、最近は次第に語り手がなくなり、聞けなくなってきています。私たちはいまのうちにもっと、この大事な話を聞いておかないといけません。そして子に伝えないといけません。

 「身体は動かさんといかんね。いまはソフトバレーをやっとるよ」とも。70代でバレーですか。ソフトバレーというからには、チームはきっと高齢者ばかりなのだろうけど、それはお元気ですねえ、と激しく感心しました。確かに体型も、仕事柄もあってか、全く無駄なし。海の男。揺れる船の上もヒョイヒョイ跳び回る。「お客さんも、40代かい。その頃から運動不足になるから運動は、せないかんよ」と。はい、そのとおりです。激しく危機感を持っています。「副会長が終わったら、鍛えよう」と思っていますが、その時点で既に言い訳になっているのも自覚しています・・。

 

 釣りの方は、竿を使わず、凧糸のような太い糸を糸巻きで繰っての「手釣り」。えーっこんなの嫌や〜と思いましたが、何の何の、こっちの方がアタリ(魚が餌を食った感触)がとてもよく分かり、妻も私もよく釣れました。4歳の子どもは、タコを取り逃がしたところから興味を失い、船上で熟睡していました。釣果は写真の通りで、27センチくらいのハタが釣れるし、キスも型のいいのが掛かるし、引きのいいベラが沢山釣れて面白かったです。泊まった民宿に帰って、煮付けにしてもらい、昼ご飯になりました。

 船頭さんが、小さい頃から知った海で、釣れるポイントに次々案内してくれて、いい休日となりました。何より、「自然のものを獲って暮らす」という困難だがシンプルで迷い無き生き方のプロと親しくお話できるのは楽しいし、カッコイイ海の男と出会い、我が身の問題点を激しく(3度目ですが)見つめ直すことが出来ました。

【2009年9月記】 

 
 大漁! 煮付けにしました
 

更新料特約は無効  弁護士 平尾嘉晃

 京都のマンションやアパートの賃貸借契約では、更新料という特約をよく目にします。しかし、更新料は日本全国どこでもあるものではありません。そのため、大学入学で京都に来た学生さん、あるいは、転勤で初めて京都に赴任してきた方などは、見慣れない特約にとまどっておられるようです。

 

 更新料の沿革は、戦後の住宅難で家主の立場が優位であった昭和30年ころに東京周辺で始まり、その後、高度経済成長期の地価高騰に伴い広がっていったものと言われており、もともとは、賃借期間が数十年という長期にわたる借地や借家契約において、高騰した地代との不均衡を補うものとして生まれてきたようです。たとえば大正時代に契約した借地が昭和30年に更新時期を迎えた場合、地価情勢や物価情勢が契約当初と全く異なっており従来の条件では不均衡が生じるため、更新の際に更新料という名目でその不均衡を埋め合わせていました。このように更新料はもともと長期契約で発生したものなのですが、貸手側の実入りになるため、主に都市部において短期契約であるマンションやアパート契約でも不動産管理業者などが導入していったのです。

 

 しかし、賃貸人や管理業者が、更新料を自分の収入のために、もともとの使われ方と異なった使い方をするようになってから、当然のことながら「更新料って、いったい何のためのお金なのか?」という疑問が出てくるようになりました。そして、こうした当然の疑問に対して、管理業者側は様々なエクスキューズをしてきました。

 たとえば、短期契約であって地価や物価の高騰もみられないマンション・アパート契約で、しかも賃料以外の名目でお金をとることに対しては、更新料が賃料であるという説明は困難でした。そのために生まれた説明として、「更新拒絶をしない、その権利を放棄する対価である。」というものがありました。しかし、日本には借地借家法という法律があるため、マンションやアパート契約では、賃貸人からは更新拒絶あるいは解約申入れができないのが実情です。そうすると、有りもしない権利を放棄するからといってその対価が発生することは理屈にあいません。また、「借地借家法で保護される法定更新に比べて賃借権が強化される、その対価である。」という説明もなされました。しかし、現実には法定更新でも更新料をとる特約がほとんどであることや、借地借家法のもとではそもそも解約申入自体が否定されるので強化の意味がないといえます。

 こうした理屈付けが苦しくなると、次には、「賃料名目ではないけど、賃貸人は収入として考えているので実質は賃料だ。」という主張が出てきました。そして、最後には、「更新拒絶権放棄の対価や賃借権強化の対価や賃料補充など、いろいろな性質が入り交じっているのだ。」という主張さえ出てくる始末でした。このように、更新料は法律専門家の中でも明確な説明のつかないものであり、“ぬえ”のような存在だったのです。

 

 平成21年7月から9月にかけて、京都地方裁判所あるいは大阪高等裁判所は、更新料特約は無効であるという判断を相次いで下しました。これまで趣旨不明瞭なまま、漫然と使われていた特約について、内容が不合理であれば無効であることを確認するという積極的な司法判断姿勢を裁判所が示したといえます。また、こうした、悪しき慣行の撤廃・契約の透明化は、企業のコンプライアンスが問われる現代にあっては、当然の社会的要請といえますし、企業や企業に携わる法律専門家も、改めて衿をただす必要があるでしょう。

【2009年10月記】 



全国法曹サッカー大会に参加して  弁護士 宮ア純一

 

 私の趣味はサッカーですが、先日、全国法曹サッカー大会というものに参加しました。全国法曹サッカー大会というのは、都道府県単位の法曹関係者がサッカーチームを組織して、その全国大会を行うというものです。法曹関係者には、弁護士、検察官、裁判官、裁判所職員、司法修習生等が含まれます。ただ、全国大会といっても、全都道府県が参加するわけではなく、都道府県によっては法曹サッカーチームが組織されていないところもあります。今大会の参加チームは17チームで、滋賀県で行われました。北は北海道から、南は九州まで、それぞれのチームが滋賀県に集い、笑いあり涙ありの激闘を繰り広げました。私は京都チームに所属しており、京都チームからは2チームが出場しました。

 

  この全国法曹サッカー大会は、サッカーという共通言語を通じて法曹関係者の親睦を深めようと二日間に渡って開催されたものであり、今年で22回目を数えます。日頃仕事に忙殺され、デスクワークの多い法曹関係者にとって、サッカーは健康増進、ストレス発散にもなります。参加者年齢も多様で、20歳代の選手から50歳代の選手まで参加し、女性の選手もいます。中には、元Jリーガーの選手もいたり、他方でサッカー全くの初心者もいたりで、まさに、老若男女問わず立場・世代を超えて親睦を深めることができました。

  肝心の大会の結果はというと、京都チームのそれぞれの成績は、5位と11位でした。優勝をねらっていたものの、力不足で今大会は優勝できませんでした。去年の大会も優勝をねらっていましたが、目標の達成はできませんでした。一昨年も優勝をねらっていましたが、やはり優勝できませんでした。来年こそは優勝できると信じています・・・。

 

  サッカーは、ボール以外に特に重要な道具を必要とせず、ルールも単純なため、先進国のみならず経済水準や教育水準が低い国に至るまで広く普及し、ラテンアメリカやヨーロッパを中心に老若男女を問わず、世界中のあらゆる地域でプレーされています。世界中のほとんどの国でナショナルチームが組織されていることはその現われの一つといえます。サッカーは、競技人口および国際的な認識が最も高いスポーツの一つであり、全世界200の国と地域でプレーされており、競技人口は2億4000万人であるといわれています。言葉も文化も異なる2億4000万人の世界中の人々が、サッカーボールというたった一つの共通言語で理解し合える、そんなすばらしいスポーツがサッカーです。

 

  日本サッカー育ての親といわれるドイツ人のデットマール・クラマー(Dettmar Cramer)は次のように述べています。

  「サッカー、それは本当に素晴らしい競技だ。何故なら、子供を大人に、大人を紳士に育て上げる競技だから。サッカーは人生の鏡である。そこには人生のあらゆるものが映る。グラウンドはサッカーだけをやるところではない。人間としての修練の場である。」

  私にも紳士になれる日が来るのでしょうか・・・。
【2009年11月記】




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